2015年6月3日水曜日

理系ヲタクの初めて物語

 僕らの部室にテレビゲームがありました。伝説の「インベーダーゲーム」が登場する前のことです。当時、テレビゲームの完成品は市販されてなくって、送られてきた部品を自分で組み立てる、いわゆるキットでした。かなり高額だったと思いましたが、先輩の中にお坊ちゃまがいたんで買ってもらえたみたいです。

 ゲームは単純な2人用テニスゲーム。電気屋の息子が家からポータブルテレビを持ってきて、みんなで顔を寄せ合って小さな画面を見ながら遊んでいました。
 ある日、終電まで遊んでいた同級生たちが、翌日、酷い頭痛を訴えて、揃って欠席したんです。で、彼らに付いた診断名は、「眼精疲労」でした。
 恐らく、テレビケームのやり過ぎで学校を休んだという、日本でもかなり早い事例だと思います。

 僕が、初めてパソコンを買って来た時、周りの大人たちは、「そんなもの買ってどうするんだ。」って言いました。確かにゲームか、たわいもないデータを処理させるくらいしかやることなかったですけど、何かに使うから買うんじゃなくって、何だか分からないから買ったのに、全然理解してもらえませんでした。
 で、MS-DOSとかが出てきたら、一気に興味を失ってしまいました。だって、使い方を覚えることほどつまらないことってないでしょ。今では、エクセルとか使うときも「俺、パソコン全然分からないんだ」とか云って、全部若い人たちに任せちゃっているんです。本当は彼らが生まれる前からパソコン使ってたんですけどねw。これって、アイドルに熱が冷めたときのヲタクと同じですよねw

 同じ頃、町の文房具屋さんに東芝の「ルポF1」っていうのが出ているのを見つけました。「1」ですよ。初号機ってやつです。今で云うと「テプラ」をでかくしたようなやつで、七文字しか表示できないんですけど、喜んで買っちゃいました。ワープロって言葉も知られてない時で、店のオヤジさんに「自分で売っといてこんなことを云うのも変なんだけど、お客さん、これ買って何すんの?」って言われたんです。
 FDもない頃でしたから、文書の保存は、ラジカセを使ってカセットテープにしてました。そしたら、周りの人たちから、「手で書いた方がよっぽど早い。」とか言われて、「それより和文タイプの使い方を覚えろ。」って、職場の先輩に本気で言われたんですよw。

 だけど、僕らみたいなヲタクが最初に飛び付いて、せっせと貢いだお金を、NECとか富士通とか東芝がコンピューター部門に投資したわけでしょ。で、今があるわけですよ。
 
 僕は、エンジニアの道には進めなかったけれど、コンピューターに人と同じように歌を歌わせて、CGでダンスをさせるっていう、どうでもいいことをこんなに真剣にやっている人たちの存在を知って、そこに自分が忘れかけていた理系ヲタクの心意気を感じたからこそ、初音ミクなんかに、ここまで入れ込んでいるというわけなんです。

 だから、周囲から「そんなもののどこが面白いんだ。」とか、「人間の方がよっぽどいいだろ。」なんていう言葉を浴びると,逆に嬉しいんですよ。

 だって、新しい文化は、大人たちの無理解から始まるんですからね。

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