2015年10月18日日曜日

駆逐艦「秋月」 ~期待の防空艦の末路~

 しつこいとは、思いますが、「雪風」「島風」と続きましたら「秋月」についても書かないわけにはいきません。ただ、このブログが一体何なのかという問題も出てきましたので、とりあえずは、これで一区切りとさせていただくことを、予めお伝えしておきますww

 ここまでの記事で、対艦攻撃用に特化した日本の駆逐艦が、いかに悲惨な最後を迎えたかを投稿させていただきました。
 日本の駆逐艦は、アメリカの潜水艦に対しても有効な働きができませんでした。高性能のソナーが開発できなかったということもありますが、大西洋でドイツのUボートと熾烈な戦いを経験していたアメリカ海軍にしてみれば、太平洋の日本軍の潜水艦戦など比べものにならなかったのでしょう。アメリカの潜水艦に撃沈された日本の艦船は数えきれませんが、日本の駆逐艦がアメリカの潜水艦を撃退したという話はほとんどありません。

 さて、そんな旧日本海軍ですが、ようやく防空艦の建造に着手します。それが秋月型駆逐艦でした。秋月型の駆逐艦は、終戦までに12隻が竣工します。
 秋月の最大の特徴は、長10センチ高角砲を8門装備していることでした。砲身寿命が短く、頻繁に砲身を交換しなくてならないという短所はありましたが、長射程、高初速の、駆逐艦に搭載された初の対空砲でした。

 これが本物の秋月です。


 で、これが艦これの秋月のフィギュアですw。青島製作所が作っているんですね。世の移り変わりを感じます。これを、1万円出しても買いたい奴がいるというのも凄いですけど。


 他の駆逐艦より、少し大人っぽいのは、秋月型が大型の駆逐艦だからでしょうか、右の太腿に付けているのは、予備の砲身ですね。まったくオタク心をくすぐる完璧な設定です。

 で、フィギュアの背中をご覧になればお分かりかと思いますが、秋月には、4連装の魚雷発射管が一基搭載されました。防空直衛艦として構想されたものの、結局は、魚雷を搭載する対空型駆逐艦として建造されたのです。防空の直衛艦という弱腰の発想では、建造の認可が下りなかったといわれています。で、形ばかりではありましたが、魚雷発射管を1基だけ搭載して、駆逐艦としての体裁を整えたようです。軍令部の艦隊戦へのこだわりは、この段階にきても、未だ解消されていませんでした。

 秋月は、最初の実戦で、米軍のB-17を撃墜するという戦果を上げます。米軍司令部は、この事態に驚き、全部隊に秋月型の艦艇には近づくな、という指令を出したと云われています。本当にこんな指令が出ていたのかを疑問視する研究家も多いのですが、まあ、エピソードしては、面白い話かなと思います。

 で、このことをもって、いかに秋月が優秀であったのかを語るオタクがいます。中学生だった僕もそうでした。最初から秋月型を量産していれば、戦争に勝てたんじゃないか、なんてねw。
 しかし、飛んでいる航空機を撃ち落とすというのは、簡単なことではありません。対空用の射撃レーダーとか、VT信管とか、高度なシステムが必要なんです。日本には、そんなものはありませんでした。いくら高性能な対空砲を持っていたとしても、人力に頼っている限り、当たればラッキー程度の代物だったんです。
 大人になった僕なら、このエピソードの本当の意味が分かります。賞賛すべきは、米軍の対応です。僅かでも問題点があれば、徹底的に分析して対策を考え、何よりその情報をいち早く末端の実戦部隊に伝えるというシステムです。だからこそ、米軍は、緒戦に負けても、次は必ず勝ちました。戦えば戦うほど強くなる軍隊でした。たった1回の、秋月の成功体験にすがり続けた日本海軍とは歴然とした差がありました。

 1944年10月、秋月は、空母「瑞鶴」を含む4隻の航空母艦からなる機動部隊を護衛して、フィリピンに向けて出撃します。瑞鶴は、真珠湾攻撃にも参加した正規空母でしたが、度重なる敗戦で、優秀な搭乗員を失い、パイロットの多くは、発艦はできても着艦ができないという有様でした。実際、空母から発艦した攻撃隊は、母艦に戻らず、そのままマニラの飛行場に向かうよう指示されていました。この名ばかりとなってしまった日本海軍最後の機動部隊の任務は、アメリカ機動部隊をおびき出すための囮でした。
 エンガノ岬沖海戦とよばれるこの戦いで、秋月は、急降下爆撃機からの直撃弾を受けて機関が損傷、その直後、搭載していた魚雷が誘爆を起こし、船体が2つに折れて沈没してしまいます。
 魚雷の誘爆の原因については、直撃弾の影響とも、味方の艦艇が放った対空砲弾の破片によるものとも云われています。
 本来、防空艦と構想されていた秋月は、雷装をする計画などありませんでした。駆逐艦としての体裁を整えるために取り付けた1基の魚雷発射管が、秋月に致命傷を与えてしまったのです。

 機動部隊には、秋月の同型艦「初月」も参加していました。初月は、沈没した瑞鶴などの乗組員の救助にあたっていましたが、来襲した米巡洋艦隊の砲撃を受け撃沈しました。乗組員全員が戦死したため、沈没時の詳細が分かったのは、戦後に米軍の報告書が公表されてからでした。報告書によると、初月は単艦で15隻からなる米艦隊に砲撃戦を挑み、2時間に渡って、艦隊を足止めしていました。米艦隊は、単艦で向かってくる初月を小型の戦艦か巡洋艦だと思っていたそうです。なぜ艦隊戦に不向きな防空艦が砲撃戦に挑んだのかについては分かりませんが、恐らく味方の艦艇を逃がすために自ら囮になったのだろうと云われています。

 この戦いで、日本海軍は、参加した4隻の航空母艦を全て失い、真珠湾攻撃で世界中を震撼させた日本海軍の機動部隊は壊滅しました。

 お終いにちょっとだけ、勇ましい話をします。太平洋戦争で旧日本海軍は、大小11隻のアメリカの航空母艦を沈めていますが、歴史上、21世紀の今日に至るまで、アメリカの空母を沈めた国は日本だけなんですよ。

 貼り付けさせていただく動画は、艦娘による「恋の2・4・11」です。艦これMMDは、食物連鎖ならぬオタク文化連鎖の頂点に君臨するものだと思います。太平洋戦争では日本を圧倒したアメリカも、この分野では、日本には遠く及ばないでしょうww。


 艦これについては、これで一区切りです。久しぶりに戦史を読み返して、勉強になりました。子どもの時には見えなかったことも、いろいろと分かりましたし。
 また、近いうちに書きたくなるかも知れません。今度は、巡洋艦がいいですかね。

 戦艦ですか?・・・ないと思います。だって、僕は、セクシーな大人の女性より、可愛いアイドルたちが好きなんですからwww

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